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2007/01/01 23:29
[2007.01]
「2007年1月号をお届けします」
イベント情報2007年1月号をお届けします。このページでは3ヶ月(1−3月)のArtist Consultantsが共感しているArtistの活動予定を掲載しています。
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あけましておめでとうございます。
2007年が始まりました。国内の政治、経済、また国際政治においてもひとつの分岐点になる年になりそうな気配です。あらゆる意味で神経を研ぎ澄ませ変化と歴史に向き合っていく必要があります。
aritstのページに新たに書家の吉永益美さんが加わりました。若く優秀な才人だと思います。今後の活躍に期待します。
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◆3冊の本の紹介
最近このサイトのartistのメンバーでもある深谷緑氏に薦められて2冊の進化生物学に関する本を読んでいます。それらともう一冊アメリカの社会について考察した1冊を加えた3冊は、生物としての人間、社会を営む人間を理解するうえでおそらく最も普遍的で示唆にとんだものであると思われます。3冊とも斜め読み、飛ばし読みができる類の本ではありませんが、著者はいずれも知的なユーモアのセンスに恵まれており、読むほどに目が冴えてしまうような魅力を持っています。またそれぞれにその分野のトッププラスの研究者の書籍であり、その思考に沿って読み進むだけでもとても刺激的です。
「知ること」「理解すること」「気が付くこと」の延長線上にはさまざまな副産物があります。起業家には新しいビジネスが見えてくるかもしれませんし、(社会)活動家には自分の方向性を確認、修正するチャンスを与えるでしょう。文系、理系を問わず、アカデミックな仕事に携わっている人には今までの自分の業績を新しい視点で再構築してみる機会があるかもしれませんし、自分の専門に関わる重要な研究テーマが潜んでいる
かもしれません。
ただ、いずれの本も必ずしも心地よい情報ばかりを与えてくれるものではありません。カエサルの言葉を引用するまでもなく、すべての人がすべてのことを見る力を持っているわけではありません。多くの人は「自分の見たいと思う現実しか見ない」し、それ以外の現実を突きつけられると脳の働きを停止させ、場合によっては視覚や聴覚の働きまで停止させてしまいます。それでも防ぎきれないと怒り出してしまう場合もあります。
この3冊のうち進化生物学に関する2冊の本について簡単に紹介したいと思います。
もう1冊(ポール・ファッセルの本)はこのような場で内容紹介するのに相応しくないと思われますので、タイトルのみを記載するに留めることにしましょう。ただし、扱っている内容が「あやうい」にも関わらず、非常に緻密なデータに基づき客観的な記述が行なわれていることは述べておきます。この本はアメリカの社会についての同国のデータに基ずく社会文化的考察ですが、それにもかかわらず、全く歴史的な背景の異なる日本においても多くのことが当てはまるように思います。そういう意味で不思議な、そうして「理解しがたく受け入れがたい普遍性」を獲得しています。
それだけに「あなた」がそれを受け入れるだけの客観性を自らに対しても持てるかはとても保障できません。ただし、「あなた」が自分を受け入れるだけの余裕と自信を今の自分に持っているなら、この本を読んだ後、不特定多数に向けられた世の中のあらゆるメッセージの裏にこの本の指摘と同じものが隠されていることに気が付くでしょう。(私はこの本を読んでから新聞広告を見るのがとても楽しい。)
■「病気はなぜあるのか =進化医学による新しい理解= 」
ランドルフ・M・ネシー & ジョージ・C・ウイリアムズ、新曜社、ISBN4-7885-0759-5
原書:Why We Get Sick -The Science of darwinian Medicine-
Randolph M. Nesse,M.D., and George C. Williams, Ph.D., 1994, New York
■「恋人選びの心 =性淘汰と人間性の進化= 」
ジェフリー・F・ミラー、岩波書店、ISBN4-00-022823-4
原書:THE MAITING MIND -How Sexual Choice Shaped the Evolution of Human Nature-
Gieoffrey F. Miller, 2000, New York
■「階級 =[平等社会]アメリカのタブー= 」
ポール・ファッセル、光文社、ISBN4-334-76098-8
原書:CLASS: A Guide Through the American Sutatus System
Pail fussell, 1983, New York
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◇◇◇ 「病気はなぜあるのか =進化医学による新しい理解= 」
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この本は今までの医学の「至近要因」の解析による病気の理解をシャッフルし、進化的要因(究極要因)の視点から再構築したらどうなるかということを説明してくれる。
病原が直接もたらす症状なのか、人体の防御反応による症状なのか充分に気をつけて対応しないと目的とは逆の結果をもたらすことが繰り返し指摘されている。また妊娠時のつわりや子供の野菜嫌いが適応的(進化的に理にかなっていること)である可能性が示唆される。これらは「このような不都合は淘汰されてしかるべきなのにそれが残っているにはなにか進化的な意味があるに違いない」という発想から生まれてくる考察である。
また進化は病原菌とそのホスト(人間など)、植物と動物(人間など)の果てしない進化的軍拡競争の産物であることが繰り返し指摘されている。その延長で、農耕開始後1万年の急激な環境の変化は進化のスピードをはるかに上回っており、人間の体が狩猟採集の原始時代の生活には適応していても1万年、特にここ1000年の生活にはとても適応できない状況にあることが理解される。近視や肥満もこの不適応の産物であるようだ。
ある確率でおこる先天的、遺伝的異常も物理的な確率とは合わないものがあり、その確率の差だけ何らかの適応的な効果があることが示唆される。先天的な異常は単なるコピーミスではない可能性がある。それは精神的な疾病についても指摘されている。
印象深いのは母親と子供と父親は必ずしも進化的、遺伝的に利害が一致していないという指摘であり、母親の胎内で起こっているさまざまな事象が子と母の、また子に遺伝子の半分を送り込んだ父親と母親のきわめて熾烈な主導権争いと駆け引きの結果である可能性があることを示唆していることである。
おそらくこの本は生物学特に進化生物学に疎い医者や医学生のために書かれた本と思われるが、それだけに専門用語は極力廃した書き方になっており、一般の読者でも充分楽しめる内容になっている。
「利己的な遺伝子」のドーキンスは「あなたはこの本を2冊買うべきである。1冊はあなた自身のために、もう1冊はあなたの主治医のために」とコメントしている。
◇◇◇ 「恋人選びの心 =性淘汰と人間性の進化= 」
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この本は「人間らしさはどうして生まれたか」という問いに対するひとつの回答である。この本は人間の「知性」や「ユーモア」や「芸術性」は孔雀の羽と同じ、つまりよりよい配偶者を獲得するために進化してきた性質だということを証明しようとしており、また非常に説得力のある説明がなされている。
進化を促すものとして環境への適応(自然淘汰)と配偶者の選択(性淘汰)があるとダーウィンは指摘しているが、性淘汰が自然淘汰に比べてはるかに淘汰圧として直接的で影響力が大きいにもかかわらず、いままでの進化生物学は自然淘汰を中心に考察が進められてきたこと、その傾向は人間の進化に対する学術的な考察ではより顕著になり、性淘汰がほとんど無視されてきたことを著者は指摘している。そうしてそこに性淘汰という概念を再投入したとたん、いままで解決できなかった問題が非常にシンプルに解決できることが具体的に語られていく。
人間は言葉を得たことで相手の外見だけでなく思考や心を知ることができるようになった。そうしてそれを配偶者選択の重要な要素にし、そこからより魅力的な性的魅力としての思考、つまり知性やユーモアや芸術性が生まれてきたという。ただこの考察にはもうひとつ重要な説明が必要になる。それは男女の性差、というか孔雀やアイルランドヘラジカのような決定的な性差が、知性やユーモアや芸術性という点において、人間の男女の間ではそれほどはっきりしていない現実である。そこまで考えた上でどこまで著者の思考を受け入れるのかは読者の「知性」にかかってるといえる。
・・・もし著者の考えが正しければ、今ここで著者の本を紹介している私は自分が性的に魅力のある人間であることを誇示していることになりますね。はたして効果はあるのでしょうか(笑)。
今年もArtist Consultants をよろしくお願い申し上げます。
2007年1月
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